ヴァリアー/愛すべきこどもたち

「なんだこいつむかつくー。ガキのくせに」
「ベルだって十分こどもじゃないか」
「うーるーさーいー!」
「ほら、僕より子供っぽいよ。不利になると話を聞かない」
「だって俺王子だもん。だいたいは許されちゃうしさー」
「ガキ」
「ガキに言われたくねー!」


ヴァリアーの人間はたいがい寡黙である。暗殺をなりわいとするためか口数の少ないものが好ましいとされる。弁論に長けていることは確かに仕事をこなす武器になる。しかし暗殺に不可欠な要素ではない。
そんなヴァリアーにお子さまが二人。昔に比べたらたいそうにぎやかになった。先代を知るスクアーロだからこそ思うことだ。

「抱っこくらいさせてくれてもいいじゃんかー」
「甘えるなよ。きもちわるい」
「だって、マーモンがちょうどいい大きさなんだもん」
「僕はベルになんか抱っこされたくないね」

仲良しなのか仲が悪いのかよくわからないベルフェゴールとマーモン。個人主義が基本で単独行動の多いヴァリアーではとりわけよく見かける組み合わせだ。仲が悪いだけではないらしい。

「そんなに抱っこしたいならお金取るよ」
「なにこいつ」
「りっぱなビジネスさ」

マーモンはスクアーロの足にぺたりと手を張りつけた。そこからベルフェゴールを見上げる。

「スクアーロ。ベルが僕をいじめるんだ」
「あー、ずりー!大人を盾なとるなよ」
「僕はいたいけな赤ん坊だからね、守ってもらわなくちゃ」
「強欲なくせに」
「赤ん坊は生きるために強欲じゃないか」
「ふつーの赤ん坊は金にがめついたりしないじゃん」

自分越しに言い合うベルフェゴールとマーモン。間に挟まれたスクアーロはただ瞬きをしてふたりを眺める。仲が良いのか悪いのかてんでわからない子供たちだ。

「喧嘩ならよそでやれ」
「おとなのくせにこどもを守らないの?」
「貴様らは守られなくても生きてけるだろ!よっぽどそこらのおとなよりしたたかだぞお」
「スクアーロは大人気ないね」
「でしょ」
「う゛おおい、貴様ら喧嘩してたんだろおが」

こどもらは特にわだかまりもないらしく、ベルフェゴールが差し出した腕にマーモンおとなしくさらわれた。
「ボスー」

「ボースー」

ベルフェゴールは かくかくと居眠りをしていたボスのデスクに近寄りそのうえにマーモンを乗せた。マーモンはボスの顔を見上げる。

「ボス。スクアーロがさ」
「おとなげないんだよ、あいつ」


かくん、と大きく頭を揺らしザンザスは顔をあげた。スクアーロという単語は拾えたらしい。こちらをにらみつけている。寝起きの彼は不機嫌らしい。

「ガキをいじめんじゃねーよ」

 うるさくておちおち眠りもできねえ、と目が据わったザンザスにスクアーロは頬を引きつらせた。
子供たちは確かに愛すべき弱い生きものだ。しかしベルフェゴールとマーモンはぜったい例外だ。
 不機嫌なボスの手前でしてやったりと笑うこどもたちに スクアーロは強く心にそう思うのだった。



20070108
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