ザンマモ/ 憤怒を左手に

必要なものはヴァリアーのボスの座と自分の体。
 欲しいものはボンゴレ十代目の座。ただそれだけ。
 部下は優秀だといい。中身は気にしない。気味悪かろうが狂ってようが可笑しかろうが強ければそれでいい。
 そんなザンザスの考え方が現在のヴァリアーを作り上げた。おかまだろうがホモだろうが王子だろうが機械だろうがむかつくやつだろうが、赤ん坊だろうが、強ければいい。なんでもありだ。それがザンザスの率いるボンゴレ特殊暗殺隊ヴァリアーというものだ。彼は部下が欲しいのではない。力が欲しいのだ。だから強ければとくに気にしなかった。ひととなりがどうであろうと。

 つくづく思うことは、この蛙の気味悪さである。ファンタズマといってマーモンのペットだ。ときおり、ちらりと視線を向けつまらなさそうに瞳を閉じる。
「……むかつく」
 よくわからないけど、むかつく。蛙の目が生理的に受け付けないのかもしれない。握り潰してしまえと思うくらい気持ち悪い。
「それ、潰していいか」
「ファンタズマを」
「ああ。視界に入るだけで欝陶しい」
 まるでスクアーロみたいだ。一目見ただけでもいらっとする。なにがそこまで自分を触発するのかはわからない。けれどひたすらにむかつく。
「それはできないよ」
 ぺたり、と一歩遠退きマーモンは言った。
「あれ、にはこれが必要だから」
 ザンザスがマーモンをヴァリアーの一員に相応しいと判断したあれをするにはこの蛙が是が非でも要るのだ。握り潰すなんて論外だ。
 気が立っているのか息を荒げ鳴くファンタズマを手に乗せマーモンは振り向いた。確かに気味が悪い蛙だろう。しかしマーモンには必要な蛙だ。
「これがいなくなると、僕のこと要らなくなるでしょ」
 だから、だめと赤ん坊は言い残し部屋をあとにしてしまった。
 マーモンの消えてしまった部屋に一人残されたザンザスはふうと息を吐いた。あのこどもは自分になにを求めたのか。資金、それを求めたのか。なんとも賢い子だと感心してしまいそうになる。けれどあの蛙を無くしたマーモンは決して使えないわけではない。いくらばかりかの駒にはなる。それなのにマーモンは蛙を失いたくないという。
 要らなくなることをまるで恐れているような。
 そこまで考えてザンザスは推測することを放棄した。わかったとしてどうなるだろうか。少しの足しにもならない。
 自分の左手はただ憤怒のためだけに存在する。決して誰かを守るためではない。



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