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新しい仲間ができた。



ダディ!


幻術使いのエキスパートだからと誉れ高いマーモンというやつをスカウトしたのは少し前のこと。ザンザスがヴァリアーのボスに着いてからその構成員は一新された。革新を受け入れるものだけ手元に残ればいい。いらない駒は使い物になるはずもない。だから現在手先で扱えるスクアーロを酷使して幹部を務められそうな存在に声をかけていた。すべては野望を現実とするためである。そのための努力なら惜しむことはない。

 そんな中、ヴァリアーに赤ん坊がやってくることになった。

「さすがにガキの正装はねえな」
 真っ黒な服を目の前にザンザスは顔をしかめた。ヴァリアーの正装である漆黒のボックスは成人男子を基本に制作されている。だから赤ん坊に着せるには大きすぎるだろう。別に新調しなくてはならない。手間なことである。彼はそうしたことが大嫌いだった。だからいつも手のかかる雑事や役目はスクアーロに回される。
「めんどくせーことになったなあ」
 いい気味だとでも言いたいのだろう、普段から散々な扱いを受けているスクアーロはにたにたと笑っている。きちんと調べずに他人に任せた罰だ。少しくらい苦労をすればいい。
「赤ん坊とおまえは言わなかったじゃねーか」
「報告書は見せたぞ」
「しらねーよ。てめーの落ち度だ」
暴君とでも称そうか。スクアーロのボスは大いに聞き分けが悪く聞く耳を持たない。唯我独尊のお人である。だから報告書という存在もお守りにならないし盾にはできない。不機嫌そうなボスはスクアーロをにらみつけた。
「赤ん坊用の正装を手配しろ」
さもなくば、と付け足す前にザンザスに背中を向ける。さもなくば、殺すと言われるだけだ。毎回のことに馴れてしまった。死因が幼児用のヴァリアーの正装を用意しなかったからだなんて不名誉なものになるのは勘弁してほしい。回避するためすぐさま行動に出るべきだ。スクアーロがドアノブに手をかけ押し開いた瞬間、ザンザスの声がまた響いた。
「スクアーロ」
「なんだよ。我らがボスさんよ」
 いつもなら断言するザンザスが躊躇するように一呼吸置いた。
「赤ん坊を育てるのに必要なものを適当に見繕っとけ」
なんだ、ほにゅうびんやら紙おむつやらとボスは零す。本能的に堪え難いと判断したスクアーロはがちゃんとドアを締め、俯いた。
「子育てグッズかよ……」
 するとなんですか。それらも今度やってくる赤ん坊のために用意するというわけで。
うおおおおい!貴様は赤ん坊を育てる気か! スクアーロは力なく事実を反駁し思わず脱力してしまった。我らがボスは残忍で残酷で残虐の暴君。それこそ絵本のなかに出てくるような悪い王様だ。しかし、たまにずれてる。あからさまにずれてる。おかしい。そう気付いているけれど指摘したら殴られるので口にはしない。
他人の庇護を必要とする赤ん坊をどうしてヴァリアーが雇おうか。残念ながらヴァリアーは託児所ではなく暗殺部隊だ。我らのボスがそう自覚しているのをスクアーロは切に願ってしまった。

20070108
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